交通流とCAモデル

交通流の分析は渋滞のダイナミクスの解明や都市交通シミュレーションの構築に重要な役割を果たします. 交通流の数理モデルは様々なアプローチが提案されていますが,ここでは確率的に動作するセルオートマトン(CA)に着目します.

CAによる道路および車両の表現は次のようになります.ひとつの車線をセルと呼ばれる区画に分け,各セルには一台の車両が存在できるとします. 左から右へ進む車線を考えると,前方(つまり自分より右側)のセルに車両がいない場合にこの車両は前進することができます. 確率CAは前進する確率を有し,これに従って次の時刻に前進するか,同じセルに留まるかが確率的に決まります.

図1:次の時刻での位置が確率的に決まる.

最もシンプルな構造をもつTotally Asymmetric Exclusion Process (TASEP)と呼ばれるモデルは,全ての車両で共通の前進確率を持ちます. この確率はどのような状況でも(前の車両との車間距離やセルの位置に依存せず)一定です. 前進確率を0に近づけると前が空いていてもなかなか進まない車両となり,1に近づけると頻繁に前進する車両となります. つまりこの前進確率は車両の平均速度を表現しています.

0.5 = hop probability

図2:前進確率(=hop probability)によってTASEPの動作が変化する.

ある交通流を分析,もしくはその動きを模倣したい場合,モデルを最適化する必要があります[1,2]. TASEPでは前進確率によって車両の動作が決まります.つまり前進確率がパラメータであり, 所望の交通流を表現するのに最適なパラメータ値を見つければよいことになります. 道路を離散化しセルに分割し,前方のセルが空になった回数(これをxとします)および次の時刻で前進した回数(これをyとします)を数えることで前進確率を y/xで推定できます. 統計学では様々なパラメータ推定法があり,その推定精度がどうなるかが研究されています. ちなみにy/xで前進確率を決めるのは最尤推定に相当します.

図2のTASEPの動作中に最尤推定した結果を示します.時間の経過とともにxとyがデータとして蓄積され, 前進確率の推定精度が安定していくのが分かります.


図3:赤が真の前進確率,緑が推定した結果

参考文献

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